
Heartman HVH-250 VS Kid’s Guitars EVH Replicaの真実
比較シリーズ第二弾!!
前回はMusicman EVHの本家と国産のAXIS EXを、私の思う通りに比較させてもらった内容でした
今回は、レプリカモデルのHeartman HVH-250(以下HVH)とKid’s Guitars EVH Replica(以下Replica)を比較した内容です
そもそも、レプリカ物をどう比較するか?という話ですが、これには隠された『真相への検証』があるんです
Heartman HVH-250が発売されたのは1996年の秋頃なんですね
当時の販売広告を過去の記事【Documents】に書きました
広告はこちらです
Kid’s Guitars EVH Replicaも過去に何度か記事にも書きましたが、当時販売していた今はなき三鷹楽器さんの広告を見て問い合わせた事が初まりです
詳しく話を聞くと、パーツ類やグレードの高いメイプルトップ材等、現状販売のレプリカに希望のオーダー内容で変える事のできるセミオーダーを受け付けているとの事やったんで、変更点を含めて見積もりを出してもらってから注文しました
そのオーダーをした時期は1996年の春頃だった事をよく覚えています
そして、この2本はヘッドにブランド名があったりなかったりですが、同じ製作者か否か?まで絞れるかは分かりませんが、同じ工房で作られたKid’s Guitars製であると私はにらんでいます
もしそうなら、同じ年の1996年に作られた2本のレプリカモデルを細かく比較できますし、同じ工房出身のギターであるか?の検証もできるという事です
更に、HVHが何を模範にした贋作なのかにも迫れると思ってます
今回の比較編は前回同様に今回も長編になりますが、最後までお付き合いいただければ幸いです
今回もこの2アイテムに手伝ってもらいます
ではまず、どこからいこうかと考えましたが、前回の比較編と同様に上から順にヘッド形状からいってみます
ギターヘッド形状
両ギターのヘッド部の正面写真です
HVH
Replica
テンションバーの取り付け位置の違いで見え方が変わりますが、HVHに比べてReplicaがひと回りもふた回りも大きく見えます
ロックナットの両サイドのネックからヘッドへ流れる部分が広がっているのが分かります
Replicaには化粧板のキルト杢を貼っもらいました(セミオーダー内容)
ヘッド部塗装
マスキング方法が違いが分かります
HVHはエッジを通り過ぎて側面にも
Replicaはエッジ部分までです
前回の比較編でも書きましたが、染色する塗装方法はマスキングテープで区切りをつけて刷毛で塗る仕方です
そこに誤差が生まれるのはどことなく意図を感じますが、今はまだ書かないでおきますね
ヘッド厚
HVH
Replica
Replicaの方はヘッド形状と同じく、ヘッドの厚みも約1mm厚いです
チューナーペグ
これは同じ時期のSchaller M6なので変わりはありません
HVH
Replica
角度の違いもありますが、Replicaのヘッド外周が大きい事がここでも分かりますね
Replicaは本来Gotoh製の物を使用してありましたが、オリジナル同様にSchallerにして欲しいという(セミ)オーダーをしました
市販品のKid’s Guitas EVH Replicaの、今見る事のできる画像検索で確認していただければ、お分りいただけると思います
ロックナット&テンションバー
Gotoh製の物ですのでここは一緒です
HVH
Replica
しかし、ロックナットの取り付け方はHVHはMusicman同様で、Replicaはナット表側からネジ止めです
これはネックを薄くして欲しいとオーダーしたせいでしょうね
裏からボルトを入れてナットを固定すると、突き出るんでロック機能が効かないからの配慮と思ってます
ブランドロゴ
HVHには「HEARTMAN」としっかりありますが、Replicaにはありませんが一応
HVH
Replica
HEARTMANロゴの位置はMusicmanロゴとほぼ同じ位置にあり、Ernie Ballロゴのない分1、2弦側に寄ってるように見えます
ネック塗装
HVHはネック全体をポリウレタングロスフィニッシュ、Replicaは同じくポリウレタンを極薄にしたサテンフィニッシュです
貼りメイプル指板
ハイフレット部の両側の写真からです
HVH
Replica
HVHはMusicmanの用に1本のネックをスライスした後に再度貼り合わせる方法ではなく、ネック側と指板側の材が別の材で構成してあります
Replicaは1本のネックをスライスしてから、指板側をひっくり返して貼り合わせてあるので、ネックのねじれを防ぐ為ではないしょうか?
板目と柾目が反転してるのでよく分かります
HVHの他の部分も見てみましょう
やはり別々のメイプル材で構成してあります
フレット
HVH
Replica
HVHにはJim Dunlop 6000 or 6100並に太い物が使用してあります
Replicaはフレットの指定はしなかったのでJim Dunlop 6105より細身なサイズの物です
ポジションマーク
HVH
Replica
Musicmanのように●マークが小さくなく、共にFenderサイズに類似した同サイズの●マークです
続いてボディへの比較にいってみましょう
ボディ形状
ボディバックのエッジの部分を見てみましょう
HVH
Replica
HVHのボディエッジは角ば利気味ですが、ReplicaはHVHに比べ若干なだらかになってます
ここでも模範にした物が伺えます
バインディング
HVH
Replica
写真の撮影角度でHVHは分かりにくくなりましたが、両方共に5mmです
ボディの厚み
HVH
Replica
若干の誤差はあるものの、ほぼ一緒の範囲かな?
だんだん似た部分が浮き彫りになってきて確信に迫りだしましたが、まだまだどんどん突き進みます
重量
体重計しかなく、2本の写真を撮った日が何ヶ月か空いてしまったんで体重計が違います
HVH
Replica
これは個体差以外に、単純にボディバック材が違うので重量の差が生じてます
HVHはバスウッド材、Replicaはアルダー材(セミオーダー)です
それにしてもReplica軽いなぁ
ストラップピン
HVH
Replica
Replicaのピンははずしたんで取り付け位置のみですが、双方共に真上に向いてます
続いてボディ材から内部の深い所に迫ってみます
ボディ材
これは先述通り、HVHはバスウッド材でReplicaはアルダー材です
前回の比較編でも述べた通り、バスウッド材よりアルダー材の方がサスティーンは段違いに良いです
何も考えてはいませんでしたがセミオーダー内容を伝えるまでに、バスウッド材とアルダー材の何となくな違いを、当時の自分は何となくの体感で分かってたんでしょうか?
トップメイプル材
ネックポケット内が1番分かりやすいんでそこの写真です
HVH
Replica
染色した塗料が内側のメイプル材の厚みの所まで着色してあります
何となく仕事の仕方が一緒ですね
厚みを測ってみます
HVH
Replica
この部分はReplicaの方が厚いですね
厚みがあるにも関わらず、染料の違いなのか、Replicaは杢目が浮き出にくいし色抜けもしにくいですね
HVHはAXIS EXと杢目が似ていて、立体感というか深みがないんで化粧板を貼ってるのでは?と思い、内側のメイプル材に着色してある部分をサンドペーパーで少し擦ってみました
ご覧の通り3.7mmの1枚板でした
以前所有してた本家も似たような杢目で角度や光の入り方で、このHVHのような見え方になってた事を思い出しました
ネックジョイント部
HVH
Replica
HVHは治具穴がある以外に特に目立った所はありません
Replicaは突き板が貼られていて、これは高さを合わせる為なのか柾目なんで補強の意味があるのか、その両方共なのか?
ただ、ネジ穴の補修があるのんが気になりますな
ネックポケット
HVH
Replica
HVHもReplicaも特に変わった所はなく、無塗装なんでボディ材の違いが見て取れます
角度を変えてもう1枚ずつ
HVH
Replica
HVHは以前に撮ってた写真なんで角度がなく見えにくいんですが、両方のロッド調整用に凹んだ所で境目がついた加工が分かります
現物を見ると明らかに同じ加工の仕方という事が分かります
職人さんの仕事の仕方って気分で大きく変えられないですし、癖付くと思ってます
ピックアップ&ピックアップキャビティー
HVH
ネックピックアップはDiMarzio DP193 Air Nortonで、シングル配線(ノンアジャスト側/クリーム側)してあるのはHVHのデフォルトです
ブリッジピックアップはDimarzio DP192 Air Zoneでこちらはハムバッカーのままです
腐食によるサビが原因で固定部が折れてますが、何とかなってます
当初の予定通り、いずれは1980年頃の古いDimarzio PAFに交換してTerry Rogers風か、某T氏のばずのサブみたいにW BlackのP.Uにしてみようかと計画中です
キャビティー内には色抜けする前の青みが残ったパープルカラーが残ったままです
Replica
ピックアップはネック、ブリッジ共にDimarzio DP155 Tone Zoneです
市販のモデルもこれと同じくTone Zoneを搭載してありました
セレクタースイッチ
HVH
Replica
キャビティ内の形状以外にお気づきでしょうか?
Replicaの配線材を取り出してクローズアップしてみます
にらんだ通り、もうほぼ確定ではないでしょうか?
ヴォリュームポット
HVH
Replica
HVHはCTS製1994年46周目の500kΩ/Bカーブ、Replicaは国産500kΩ/Aカーブ
ヴォリュームノブ
HVH
Replica
HVHのノブは推測ですが、Musicmanのパーツは購入可能なんで、代理店の神田商会さんから取り寄せた物と思います
Replicaのノブは入手当初、金の文字でよくあるFenderギターにも使用されるTONEノブでしたが、似た文字を探してGuitarmanのパーツに交換しました
推測違いなら同じメーカーの物かも…
トレモロユニット
HVH
Replica
共にGotoh製のフロイドローズライセンスドの物ですが、HVHは1988T、Replicaは1996T(旧型?)です
スタッドを打ち込む部分、Musicmanはアンカーなしですが、この2本はアンカーが使用してあります
replicaのアームにはネジ穴があり回していくとアームを固定できますし、キャップで締めて固定する事も可能です
市販のレプリカもこの1996T(旧型?)です
トレモロブロック
HVH
Replica
この部分も両方一緒です
ネックプレート
HVH
Replica
HVHは10本限定で製作された物で、冒頭でも見ていただいた販売時の広告に、ネックプレートも作成と書いてあった通り、何の刻印もありませんがMusicmanと同様にプレートがあります
Replicaはプレートを挟む事なくネジ止めです
ヒールコンターカット
HVH
Replica
HVHは本家同様になだらかになっていて、AXIS EXのようにポコッとしたいらない出っ張りはありません
replicaはなだらかなだらかなんですが、ネックへ向けて急激に角度のある削り方です
アウトプットジャック
HVH
Replica
HVHは市販品でよく目にするメタルプレートです(隣は本家Musicman)
Replicaはスリムなプラッチックプレートです
以上
ここまで見てきましたが、類似するパーツや加工の仕方や仕事のやり方から、99%、2本共Kid’s Guitarsの物と言って過言ではないでしょう
ここからは憶測の範囲を出ない自分の結論です
私が思うに、三鷹楽器さんで販売していたレプリカを製作するKid’s Guitarsさんに、限定モデルで本物により近いレプリカを作って欲しいというオーダーをして生まれたのがHEART MAN HVH-250(とHVH-150)だったんではないでしょうか
HVH-150は250の廉価版として5本限定で販売されましたが、それは三鷹楽器さんでも販売していたレプリカの仕様なのでもうほぼ決まりなんでわ?
HVH-150はReplicaのセミオーダー以外の仕様が写真から伺えます
話を伺える方にも聞いてみようと思いますが、どなたか、真相を知っている方から言葉をいただければあと1%は埋るでしょう
ちなみに、今回の検証でHVHの元になったのはAXIS EXと思います
AXIS EXと類似してる箇所が多々あったのでそうではないかな?と
MUSICMAN EVHとAXIS EXの違いに今回と同じような写真を載せてるんでチェックしてみてください
今度は冒頭に乗せた広告記事に書かれたHVHの売りの部分を、実物を使って検証してみようと思います
ご期待いただければ幸いです
GEARページに掲載しているのでそちらもご覧ください
HEARTMAN 1996 HVH-250 Translucent Purple
Kid’s GUITARS 1996 EVH Replica Translucent Red
nagase


8件のコメント
ピンバック:
青山誠治
とても興味深く読ませていただきました。実は今ヤフオクにkidsギター製造と思われるレプリカがあります。しかしネックが4点留めなのです。お持ちのレプリカはセミオーダーで5点留めにされてのでしょうか?あとトラスロッド調整のレンチを差し込む部分のザグリがありません。お手数ですが一度ヤフオクを見ていただいてお返事いただけませんでしょうか?よろしくお願い致します。
nagase66
青山様
コメントいただきありがとうございます
出品されている実機のURLをお教えいただけますでしょうか
よろしくお願いいたします
柿
https://page.auctions.yahoo.co.jp/auction/m469268506
青山さんのおっしゃってるヤフオクはこれかと
nagase66
柿様
お教えいただきありがとうございます
確認させていただきました
ここで青山様のご質問にお答えいたします
私がセミオーダーしたギターは10代だったので本物が5点止めすら知りませんでしたので製作していただいた方の意向と思います
トラスロッドレンチの入る部分が空いていないのは分かりません
Fukano Guitarと手書きされている写真を見ますと製造はKid’s Guitars、木戸氏が閉業されてからの物と思います
青山誠治
返信遅れまして申し訳ありません。
丁寧なご説明ありがとうございました。ヤフオクのレプリカは何としても落札したいわけではないので金額が合えばいこうかなと余っております。
低い落札価格になれば良いのですが。
ありがとうございました。
Tai
突然のコメントで失礼致します。
Heartman HVHについて、下記の元ハイエンドギターズ•ビルダーの文章によりますと、
自分はTokai製の可能性が高いと思いますが、もしよろしければご参考までにご一読ください。
よろしくお願い致します。
http://www.eonet.ne.jp/~o2factory/axisex1.html
nagase66
Tai様
コメントと新たな情報をいただきありがとうございます
知らなかった情報ですので熟読させていただきます